手・指の症状
ばね指(弾発指)
症状
指の付け根で屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると、“腱鞘炎”になり腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、腫れ、熱感が生じます。 朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも少なくありません。 進行するとばね現象が生じて“ばね指”となり、さらに悪化すると指が動かない状態になります。
原因と病態
原因
更年期の女性に多く、妊娠出産期の女性にも多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのも特徴です。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。母指(親指)、中指に多く、環指、小指、示指にもよくみられます。
病態
指の使いすぎによる負荷のため、動かすたびに摩擦のために炎症が進み、腱鞘が肥厚したり、腱が肥大し、通過障害を起こすために一層症状が悪化します。
診断
指の付け根に腫脹や圧痛があり、ばね現象があれば診断は容易です。糖尿病、リウマチ、透析患者では、多発性に生じます。
治療
保存的療法としては、局所の安静(シーネ固定も含む)や投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)などがあります。この注射は有効で、おおむね3ヵ月以上は無症状なことが多いですが、再発することも少なくありません。改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術(腱鞘切開)を行います。切開するのは腱鞘の一部だけです。小さな傷で済みます。
関連する症状・病気
ドケルバン病
母指CM関節症(親指の付け根の関節の変形性関節症)
症状
物をつまむ時やビンのふたを開ける時など母指(親指)に力を必要とする動作で、手首の母指の付け根付近に痛みが出ます。
進行するとこの付近が膨らんできて母指が開きにくくなります。
また母指の指先の関節が曲がり、手前の関節が反った「白鳥の首」変形を呈してきます。
原因と病態
母指の手前の甲の骨(第1中手骨)と手首の小さい骨(大菱形骨)の間の関節(第1手根中手骨関節:CM関節)は、母指が他の指と向き合ってつまみ動作ができるように大きな動きのある関節です。
その分使い過ぎや老化に伴って、関節軟骨の摩耗が起き易く、進行すると関節が腫れ、亜脱臼してきて母指が変形してきます。
診断
母指の付け根のCM関節のところに腫れがあり、押すと痛みがあります。母指を捻るようにすると強い痛みが出ます。
手首の母指側の腱鞘炎(ドケルバン腱鞘炎)やリウマチによる関節炎と区別しなければなりません。
X線(レントゲン)検査でCM関節のすき間が狭く、骨棘があったり、ときには亜脱臼が認められます。
治療
消炎鎮痛剤入りの貼り薬を貼り、CM関節保護用の軟性装具を付けるか、固めの包帯を母指から手首にかけて8の字型に巻いて動きを制限します。
それでも不十分なときは、痛み止め(消炎鎮痛剤)の内服、関節内注射を行います。
痛みが強く、亜脱臼を伴う高度な関節の変形や母指の白鳥の首変形が見られる時には、関節固定術や大菱形骨の一部を切除して靱帯を再建する切除関節形成術などの手術が必要になります。
関連する症状・病気
ドケルバン病
関節リウマチ
へバーデン結節
症状
示指から小指にかけて第1関節が赤く腫れたり、曲がったりします。痛みを伴うこともあります。母指(親指)にもみられることもあります。第1関節の動きも悪くなります。また、痛みのために強く握ることが困難になります。第1関節の近くに水ぶくれのような透き通ったでっぱりができることがあります。これをミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼びます。
原因と病態
原因
原因は不明です。一般に40歳代以降の女性に多く発生します。手を良く使う人にはなりやすい傾向があります。遺伝性は証明されてはいませんが、母や祖母がヘバーデン結節ニなっている人は、体質が似ていることを考慮して、指先に負担をかけないように注意する必要があります。
病態
第1関節の所見はX線(レントゲン)所見や手術所見から見ても変形性関節症です。第2関節(PIP関節)に生じる類似疾患にブシャール結節があります。関節リウマチとは異なります。
診断
第1関節の変形、突出、疼痛があり、X線写真で関節の隙間が狭くなったり、関節が壊れたり、骨棘(こつきょく)があれば、へバーデン結節と診断できます。
治療と予防
治療
保存的療法としては、局所の安静(固定も含む)や投薬、局所のテーピングなどがあります。急性期では少量の関節内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)なども有効です。
保存的療法で痛みが改善しないときや変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合は、手術を考慮します。手術法にはコブ結節を切除するものや関節を固定してしまう方法が行われます。
予防
第1関節が痛むときは安静にしましょう。痛くても使わなくてはならないときは、テーピングがお勧めです。普段でも指先に過度な負担が生じることを避けましょう。
関連する症状・病気
母指CM関節症
ガングリオン
マレット変形(槌指)
症状
第1関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で自分で伸ばそうと思っても伸びません。
しかし、他動伸展は可能で手伝って伸ばすと伸びます。
原因と病態
原因
突き指の一種でボールなどが指先に当ったときなどに起こります。
病態
2つのタイプがあります。
1つは指を伸ばす伸筋腱が切れたために生じるもので、腱性マレット指(腱性マレットフィンガー)と言います。
もう1つは、第1関節の関節内の骨折が生じ、伸筋腱がついている骨が関節内骨折を起こしてずれた状態になったもので、骨性マレット指(骨性マレットフィンガー)と呼びます。
診断
指の形状が第1関節で曲がっていれば、マレット変形といえますが、腱性マレット変形か骨性マレット変形かの診断が重要になります。
マレット変形を診断するには、X線(レントゲン)撮影が重要です。
骨折の有無で治療法が変わるからです。
治療
病態や受傷後の経過期間によって治療法は異なります。
腱性マレット指では一般に装具などの保存的療法が行われます。骨折を伴う骨性マレット指の場合には、手術を必要とすることがあります。詳しくは整形外科医にご相談ください。
関連する症状・病気
骨折
指の屈筋腱損傷
症状
指や手のひら、手首のあたりを刃物で切った後、指先の関節(母指(親指)IP関節、示指~小指DIP関節)、ときに次の関節(示指~小指PIP関節)も曲がらなくなります。
並走する神経や動脈が同時に切れることがあり、その場合指の感覚が障害されたり、血液が噴出して止まりにくくなることがあります。
原因と病態
前腕にある指を曲げる筋肉(長母指屈筋、示指~小指の深指屈筋と浅指屈筋)と指先を繋ぐすじ(腱)は手首から手のひらを通り各指の指先まで延びて、指の骨に付いています。各指では、指を曲げた時にこの腱が浮いてこないように腱鞘というトンネル構造の中を通っています。
この腱が刃物で切られたり、指がドアーに挟まれたりして腱が皮下で断裂したとき、また、指を曲げようとした時に反対方向に強い力で指が伸ばされて腱が指の骨から剥がれたときに、筋肉の力が指に伝わらなくなり、指が曲がらなくなります。
診断
手首、手のひら、指の手のひら側にけがをした後で、母指のIP関節、示指~小指のDIP関節やPIP関節が曲がらなくなったときに、指の屈筋腱損傷を疑います。
示指~小指ではDIP関節を曲げる深指屈筋腱とPIP関節を曲げる浅指屈筋腱の2本がありますが、指を曲げたときに、指先のDIP関節だけが曲がらない時は深指屈筋腱だけが、手前のPIP関節も曲がらないときは、浅指屈筋腱も切れています。
治療
指の屈筋腱損傷は手外科専門医に治療をしてもらわなければなりません。
刃物で切った直後の腱は、縫い合わせることが可能ですが、創の治癒過程で縫い合わせた腱が周囲とくっつかないように手術直後から動かす必要があります。そのために拡大鏡や顕微鏡視下での、強固な糸の掛け方で、かつ縫い目が太くならないようにする繊細な操作が必要になります。特に屈筋腱が通る指のトンネル(腱鞘)の中で切れたときには、腱の浮き上がりを防ぐために必須の腱鞘部分を残して、かつ縫い合わせた腱がトンネル内を滑らかに動けるようにするため、より繊細な操作が必要です。
手術後も、手外科医の指導を受けたリハビリ訓練士の監視下での、きめの細かいプログラムに沿った手指の運動訓練が3ヵ月間くらい必要になります。
トンネル内で切れて2週間以上経った腱は腫れがきて太くなるため、縫い合わせてもトネンルの中を通りづらくなり、うまくいきません。指先の骨から剥がれた腱も受傷後数日以内であれば骨に縫い付けることが可能です。 受傷後日数が経った腱や、鈍器でつぶされて切れた腱、引きちぎられた腱は、前腕にある長掌筋腱などの腱で置き換える腱移植術が必要になります。
関連する症状・病気
切断された指の再接着
切断された指の再接着
症状
刃物や機械で指、時には手のひらのレベルで指がもげて血の巡りが全くなくなった状態を切断指と言います。
皮膚や腱だけでつながっているものは不全切断指と言います。
病態
指が切断されるときは、皮膚や骨は勿論、指の関節を動かすすじ(腱)や、指の感覚を司る神経、指に血液を送る動脈、指に来た血液を心臓に戻す静脈など重要な組織も切断されます。切断された指の血行を早急に回復する手段を講じないと、指の組織は死んでしまいます。
再接着の適応
全ての切断指が再接着可能なわけではありません。刃物で鋭利に切断された指や、切断部の組織の挫滅が限局するものは良い適応です。最近では、血管が非常に細い指先の切断でも積極的に再接着が行なわれるようになってきています。
切断部だけでなく全体が圧挫されているような指、引き抜かれた指、熱も加わって切断された指、切断後冷却処置がされないで時間が経った指は再接着出来ません。
治療
微小血管吻合(マイクロサージャリ)が出来る手外科医に行なってもらわなければなりません。
切断された指は先ずサランラップで包むかビニール袋に入れ、それを氷の入った容器に入れて冷却しながら病院へ運んで下さい。
再接着術は、切断部の挫滅組織を切除した後、骨を少し短くして鋼線で固定し、指を伸ばす腱と曲げる腱をそれぞれ縫合し、顕微鏡視下で切断された静脈と動脈をそれぞれ内腔が狭くならないように極く細い糸で縫い合わせます。最後に神経を縫合して、創を閉じます。
全ての再接着術が成功するとは限りません。切断された指の状態、患者の年齢、動脈硬化など血管の状態、喫煙歴の有無などに影響されます。
術後管理
手術後24時間以内は縫った血管が詰まる可能性が最も高く、再手術が必要になることがあります。 ギプスシーネで手全体を固定し、手術部位を保護します。 手の腫れを防ぐための挙上と、血管を拡張させるための保温も大切です。 血液が固まらないような薬剤の点滴注射を約1週間行ないます。 喫煙は血管を縮めて細くするので、厳禁です。
後療法
3週間は余り積極的な指の運動は行ないません。縫った血管を通る血流が安定したら、再接着した指の関節の動きを出すための積極的なリハビリ訓練が必要になります。
縫った神経は、縫合したところから芽が伸びるように徐々に回復して来るので、指先の感覚が戻るまでに何ヵ月かかかります。
関連する症状・病気
指の屈筋腱損傷
強剛母指
症状
母指の第1関節が曲がったままで他動的にも伸びない状態であることに、母親などが気付きます。押しても痛みはありません。
原因と病態
原因
はっきりわかっていません。
病態
母指を曲げる腱というヒモがあり、硬い靱帯性腱鞘というトンネルを通ります。腱がこのトンネルの出口で膨らんで太くなり、このトンネルの中に入らなくなります。
診断
生後3ヵ月以降になって親が母指を伸ばさないことに気が付くのが普通です。伸ばそうとしても伸びないことや、しこりがあることなどで診断します。
治療
自然治癒することがあるので、放置するか副木をあてたりします。手術は狭くなった靱帯性腱鞘を開きます。それによる障害はほとんどありません。
詳しくは整形外科医にご相談ください。
関連する症状・病気
ばね指
爪周囲炎
症状
急性炎症では爪の周囲の痛み、発赤、腫れがあり、進行すると膿(うみ)がたまります。ずきずきする痛みで、眠れないこともあります。
原因と病態
爪周囲炎は、ささくれ(さかむけ)、ふかづめ、陥入爪、マニキュア、爪を噛むくせなどが原因となり、化膿菌が進入して発生します。爪の根もとに向かって化膿が進んでいきます。
このほかに指先の腹側が化膿するひょう疽(瘭疽)という病態があります。
診断
爪の側面、爪の付け根の痛み、発赤、腫れがあらわれ、進行すると膿がたまって黄色くなります。爪の下に膿がたまることもあります。
治療
初期には化膿止め(抗生物質)と冷湿布で治療します。膿がたまっているときは切開して膿を出します。爪が食い込んでいるような場合は、食い込んでいる爪の一部を部分切除します。爪の下に膿がたまっていれば爪を切除して膿を出す必要があります。
詳しくは整形外科医にご相談ください。
デュピュイトラン拘縮
症状
手掌から指にかけて硬結(こぶのようなもの)ができ、皮膚がひきつれて徐々に伸ばしにくくなります。薬指(環指)、小指に多く見られますが、他の指や足の裏にもできることがあります。痛みや腫れなどはありません。
原因と病態
原因
詳しい原因は不明です。高齢男性、糖尿病患者に多く見られます。一説には手掌腱膜への小外傷の繰り返しで生じるのではないかと考えられています。
病態
手掌腱膜と皮膚の異常です。指を曲げる腱が浮き上がっているように触れるかもしれませんが、それは手掌腱膜が肥厚し退縮したものです。指を曲げる屈筋腱は正常で、異常はありません。
診断
腱の断裂や癒着、腫瘍などのほかの病気と区別する必要がありますが、手の硬結と典型的な指の変形などにより、整形外科医が見れば診断がつきます。
治療
指の変形で日常生活に支障をきたすようになると、皮膚の突っ張りをとる手術(腱膜切除)を行います。手術後には、リハビリや夜間伸展位固定(装具療法)などの後療法が大切です。おおよその手術の適応は手掌を机にぴったりつけられるかどうかを試し、浮いてぴったり着かなくなった頃と考えてください。第2関節が曲がってきた場合には、早めに手術が必要になることもあります。
詳しくは整形外科医にご相談ください。
手の手術をされた方へ
手術後に注意すること
膚の色
ギプスや包帯から出ている指などの皮膚の色を観察します。 ピンク色なら大丈夫ですが、赤黒かったり、蒼白になっていたら、手術をした病院に連絡してください。
血行不良を起こさないために
運動による血行改善
麻酔が覚めて、指の運動が許可されている場合には、指は積極的に動かして下さい。
指輪の禁止
手術後は指が腫れるため指輪はしないでください。循環障害を起こすことがあります。
強い痛み
痛み止めの薬を飲んでも痛みが取れない場合には、手術をした病院に連絡してください。
患肢挙上
手術後は手術した手の部位を心臓より高く上げておくことが原則です。 寝ているときは枕などを利用して心臓より高くします。座っているときも歩くときも心臓より高い位置に保持します。
関節運動(血行改善と拘縮予防)
手指や肩、肘の運動が許可されている場合には積極的に動かしてください。 肩の運動な手が頭に届くくらい積極的に動かしてください。 指の運動は指先が手のひらに届くように十分に行います。
リハビリの重要性
手の手術や外傷の後はリハビリがとても重要です。 医師の指示に従ったリハビリテーションが必要です。 水治療法、装具療法、作業療法などがあります。 ただし、痛みが強い場合には運動は中止してください。
関連する症状・病気
術後感染症
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
症状
手首(手関節)の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)とそこを通過する腱に炎症が起こった状態で、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れます。母指を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が走ります。
注:短母指伸筋腱は主の母指の第2関節を伸ばす働きをする腱の1つです。
長母指外転筋腱は主に母指を広げる働きをする腱の1つです。
①短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)
主に母指を伸ばす働きをする腱の一本です。
②長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)
主に母指を広げる働きをする腱の一本です。
③腱鞘(けんしょう)
①と②の腱が通るトンネルです。
原因と病態
原因
妊娠出産期の女性や更年期の女性に多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのが特徴です。
病態
母指の使いすぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、さらにそれが刺激し、悪循環が生じると考えられています。
特に手背第1コンパートメント内には、上記の2種類の腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるために狭窄が生じやすいです。
診断
上記の部位に腫脹や圧痛があり、母指と一緒に手首を小指側に曲げると痛みがいっそう強くなることで診断します(フィンケルシュタインテスト変法)。
正しくは母指を写真のように小指側に牽引したときに痛みが強くなることで診断します(フィンケルシュタインテスト)。
フィンケルシュタインテスト変法 フィンケルシュタインテスト
自分で調べるには手首を直角に曲げ母指を伸ばしたときに疼痛が増強するか否かで判定します(岩原・野末のサイン)。
治療
局所の安静(シーネ固定も含む)、投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)などの保存的療法を行います。
改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術(腱鞘切開)を行います。その際、隔壁の切除と橈骨神経浅枝の愛護的操作が求められます。
関連する症状・病気
母指CM関節症
ばね指
ガングリオン
症状
関節の周辺や腱鞘のある場所に米粒大からピンポン玉大の腫瘤ができます。軟らかいものから硬いものまであります。通常は無症状なことが多いのですが、時々、神経のそばにできると神経を圧迫して、しびれや痛み、運動麻痺などを起こします。
手を使いすぎると腫瘤は大きくなることがあります。
原因と病態
原因
ガングリオンは関節包や腱鞘の部分から発生します。若い女性に多く見られますが、必ずしも手を良く使う人に見られるわけではありません。
病態
関節液や腱と腱鞘(腱の周りにある浮き上がり防止の鞘、ベルト通し様)の潤滑油である滑液がガングリオンの袋に送られ、濃縮してゼリー状になります。関節や腱鞘に生じるものは、関節や腱鞘に繋がっています。特に関節からできるものは、関節包に繋がる長い茎で繋がっていることがほとんどです。
そのほかにも、ガングリオンは身体中の至る所に生じます。骨や筋肉、神経に出来るガングリオンもあります。これらは粘液変性したものが融合して生じると考えられています。
診断
腫瘤があり、注射針を刺してゼリー状の内容物が吸引できればガングリオンと診断できます。
なかには外側から触れない小さなガングリオンもあります。そのような場合は診断がつきにくいので、MRIや超音波検査をして診断します。手関節の痛みがいつまでも続くオカルトガングリオン(不顕性のガングリオン)もその一つです。
治療
ガングリオンは腫瘤のみで無症状なら、放置しても心配はありません。ただし、診断をしてもらうためにも整形外科を受診しましょう。大きくなるもの、痛みが強いもの、神経が圧迫されて神経症状があるもの(痛みや運動障害など)は治療が必要になります。
保存的療法としては、ガングリオンに注射針を刺して注射器で吸引し内容物を排出します。何回か吸引排出する治療を行ううちに治ることもあります。ガングリオンに力を加えて押し潰す治療法もあります。
それでも繰り返し内容物が溜まるようなら、手術を行います。手術をしても再発する可能性もあります。再発を防止するためには、上記の茎を含めたガングリオンの摘出が必要であり、関節包の周囲に生じているガングリオン予備群の娘シスト(別の小さなシスト)の存在にも留意しなければなりません。
関連する症状・病気
ばね指
軟部腫瘍
橈骨神経麻痺
症状
上腕中央部での傷害では、母指(親指)・示指・中指の背側(伸ばす側)を含む手背(手の甲)から前腕の母指側の感覚の障害が生じ、下垂手になります。
肘の屈側での後骨間神経の傷害では、下垂指になり、感覚の障害がありません。
前腕から手首にかけての母指側がケガなどで傷害を受けるとケガの部位によりいろいろな感覚の障害が起こります。前腕から手背の母指側、母示中指の背側の感覚の障害が生じますが、下垂手にはなりません。
原因と病態
原因
上腕部での麻痺の原因は、開放創や挫傷(ケガ)、上腕骨骨折や上腕骨顆上骨折などの骨折、圧迫などにより生じます。後骨間神経麻痺の原因は、ガングリオンなどの腫瘤、腫瘍、Monteggia骨折(尺骨の骨折と橈骨頭の脱臼)などの外傷、神経炎、運動のしすぎによる絞扼性の神経障害などで生じます。
病態
上腕中央部では橈骨神経が上腕骨のすぐ後ろを橈骨神経が通過するので、外からの圧迫を受けやすく、また、骨折などで橈骨神経が牽引、挫滅、切断などの傷害を受けやすい状況にあります。
後骨間神経はFrohse(フロセ)のアーケードという回外筋入口部の狭いトンネル部に入るのでその部は移動性がなく障害を受けやすいのが特徴です。
神経炎で麻痺を起こすこともあります。
診断
上腕中央部の傷害では、下垂手を呈し、上記の感覚障害があり、Tinelサイン(神経傷害部をたたくとその支配領域に疼痛が放散する)があれば傷害部位が確定できます。知覚神経が傷害されていればTinelサインと感覚障害の範囲で傷害部の診断が可能です。後骨間神経麻痺は下垂手とは感覚の障害のないことで診断できます。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行います。
治療
骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは早期に手術が必要です。原因が明らかでないものや回復の可能性のあるものは保存的治療をします。3ヵ月ほど様子を見て全く回復しないものや麻痺が進行するものでは手術が必要になります。
保存的療法
局所の安静、薬剤内服、必要に応じ装具(cock-up splint)、運動療法など。
手術療法
骨折、脱臼などの外傷で手術が必要なものや腫瘤のあるものは、手術が行われます。神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは腱移行手術(他の筋肉で動かすようにする手術)が行われます。詳しくは整形外科医にご相談ください。
関連する症状・病気
前骨間神経麻痺と後骨間神経麻痺
ガングリオン
尺骨神経麻痺
骨折
正中神経麻痺
症状
正中神経の傷害がどこで生じているかによって症状が異なります。
肘より上のレベルの外傷による傷害では麻痺の程度はさまざまですが、母指から環指母指側1/2までの掌側の感覚障害、手首の屈曲(曲げること)、手指の屈曲、さらに手部では母指の付け根の筋肉(母指球筋)の筋力が障害されます。
前腕から手首までの間の正中神経の傷害では手根管症候群と同様の症状(母指~環指1/2指の感覚障害と母指球筋障害)を呈します。
前骨間神経麻痺では母指と示指の第1関節の屈曲ができなくなりますが、皮膚の感覚障害はありません。その時に母指と示指で丸を作らせると母指の第1関節過伸展(そり返り)、示指の第1関節過伸展となり、涙のしずくに似た形となり、“涙のしずくサイン”陽性になります。
原因と病態
原因
正中麻痺の原因は、開放創や挫傷(ケガ)、骨折などの外傷、手根管症候群や回内筋症候群などの絞扼性神経障害、腫瘍・腫瘤、神経炎などにより生じます。前骨間神経麻痺の原因は、神経炎、転位の大きな上腕骨顆上骨折などの外傷、運動のしすぎによる回内筋症候群などの絞扼性の神経障害などで生じます。
病態
外傷などで正中神経が切断、牽引、挫滅などの傷害を受けることがあります。前骨間神経は神経炎で生じることが少なくありません。
診断
正中神経の支配に一致した感覚障害があり、Tinelサイン(神経傷害部をたたくとその支配領域に疼痛が放散する)があれば傷害部位が確定できます。知覚神経が傷害されていればTinelサインと感覚障害の範囲で傷害部の診断が可能です。
運動神経の傷害も損傷部によりさまざまです。前骨間神経麻痺は“涙のしずくサイン”と感覚の障害のないことで診断できます。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査など必要に応じて行います。
治療
骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは早期に手術が必要です。原因が明らかでないものや回復の可能性のあるものは保存的治療が行われます。
3ヵ月ほど様子を見て回復しないものや麻痺が進行するものでは手術が必要になります。
保存的療法
局所の安静、薬剤内服、運動療法などが行われます。
手術療法
骨折、脱臼などの外傷で手術が必要なものや腫瘤のあるものは、手術が行われます。神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは腱移行手術(他の筋肉で動かすようにする手術)が行われます。
詳しくは整形外科医にご相談ください。
関連する症状・病気
手根管症候群
しびれ(上肢のしびれ)
前骨間神経麻痺
上腕骨顆上骨折
尺骨神経麻痺
症状
尺骨神経の傷害がどこで生じているかによって症状が異なります。
肘より上のレベルの外傷による傷害では麻痺の程度はさまざまですが、前腕の尺側と小指・環指小指側1/2の掌背側の感覚障害と環小指の屈曲障害、母指球を除く手の中の筋肉が麻痺し巧緻運動障害が生じます。かぎ爪変形も生じます。
ギヨン管部での症状は、感覚障害だけのもの、第1指間のみがやせて感覚障害がないものなどいろいろな症状を呈します
原因と病態
原因
尺骨麻痺の原因は、開放創や挫傷(ケガ)、骨折などの外傷、肘部管症候群やギヨン管症候群などの絞扼性神経障害、腫瘍・腫瘤(ガングリオン含む)などにより生じます。
病態
外傷などで尺骨神経が切断、牽引、挫滅などの傷害を受けることがあります。肘部管症候群は代表的な絞扼性神経障害の1つです。ギヨン管症候群は分岐した尺骨神経深枝が小指球筋基部を潜って行く際に障害が生じ、いろいろな症状を呈します。
診断
感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、Tinelサイン(神経傷害部をたたくとその支配領域に疼痛が放散する)があれば傷害部位が確定できます。
手内筋の筋萎縮による母指球筋以外の筋萎縮とかぎ爪変形があれば診断可能です。Froment(フローマン)サイン(両手の母指と示指で紙をつまみ、反対方向に引っ張る時に母指の第1関節が曲がれば陽性)が陽性になれば診断がつきます。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査など必要に応じて行います。
治療
骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは早期に手術が必要です。回復の可能性のあるものは保存的に治療をします。3ヵ月ほど様子を見て回復しないものや麻痺が進行するものでは手術が必要になります。(肘部管症候群はその項目を参照してください)
保存的療法
局所の安静、薬剤内服、運動療法など。
手術療法
骨折、脱臼などの外傷で手術が必要なものや腫瘤のあるものは、手術が行われます。神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは腱移行手術(他の筋肉で動かすようにする手術)が行われます。
詳しくは整形外科医にご相談ください。
関連する症状・病気
骨折
肘部管症候群
ガングリオン