足・足指の症状
外反母趾
症状
特徴的な症状は足の母指(親指・母趾)の先が人差し指(第2趾)のほうに「くの字」に曲がり、つけ根の関節の内側の突き出したところが痛みます。その突出部が靴に当たって炎症を起こして、ひどくなると靴を履いていなくても痛むようになります。
靴の歴史の長い欧米人に多い病気でしたが、最近は日本でも急速に増えています。
原因と病態
外反母趾の一番の原因は靴を履くことで、幅の狭いつま先が細くなった靴を履くと母指のつけ根から先が圧迫されて変形します。ヒールの高い靴はつけ根にかかる力が増えてさらに変形を強くします。
10歳代に起こるものは母指が人差し指より長かったり、生まれつき扁平足ぎみであったりする外反母趾になりやすい特徴があります。最も多い中年期のものは履物に加えて、肥満と筋力低下などによっておこります。
健常な足には縦のアーチだけでなく横のアーチがあります。外反母趾ではこれらのアーチが崩れて扁平足になると、中ほどにある母指の中足骨が扇状に内側に開き、それから先の指は逆に靴で外側に圧迫されておこります。
診断
変形は見た目に明らかで、痛みの程度が問題になり、母指の飛び出しを指で押すと痛む、靴を履いたときに痛む、靴を脱いでも痛むなどに分けられます。
靴を脱いでも常時痛むようになると手術が必要になります。
治療と予防
予防
母指のつけ根はフィットして先はゆったりとした履物を選びます。
足の指のすべてを開く(グ、チョキ、パー)ような、外反母趾体操を毎日行います。
両足の母指に輪ゴムをかけて足先を開く体操を行います。
母指と人差指の間に装具をはめます。
外反母趾体操(足の指を開く運動) 外反母趾用装具
手術療法
外反母趾手術の前後像
変形が進むと指についている筋肉も変形を助長するように働き、体操や装具ではもとに戻りにくくなります。痛みが強く、靴を履いての歩行がつらくなると手術をします。
外反母趾の手術法にはいろいろありますが、最も一般的なのは中足骨を骨切りして矯正する方法で、変形の進行の程度により方法を選んで行っています。手術は腰椎麻酔か局所麻酔下に1時間以内で、翌日から歩行が可能です。従来の靴が履けるようになるのには2ヵ月間ほどかかります。
関連する症状・病気
幼児期扁平足
成人期扁平足
成人期扁平足
症状
幼児のころから足裏が平べったく、大人になってもそのまま残っているタイプの扁平足では、痛みはあまりありません。これに対して中年以降に発症する扁平足では内側のくるぶしの下が腫れ、痛みが生じます。
初期には足の扁平化は目立ちませんが、しだいに変形が進みます。つま先立ちがしにくくなり、さらに進行すれば足が硬くなって歩行が障害されます。
原因と病態
足にはアーチ構造があり、効率よく体重をささえています。内側のくるぶしの下に、アーチをつり上げる働きをする後脛骨筋の腱が通っています。年齢による腱の変性や体重の負荷によって、この腱が断裂すればアーチは低下します。成人期の扁平足は女性に多く発生します。
診断
足が扁平化し、かかとが外を向くようになると後ろから複数の足指が見えるようになります。重症度は体重をかけた時の足のX線(レントゲン)像で評価します。
腱の損傷はX線像には写りませんので、MRI検査を行います。
MRIは磁気で行う検査で非侵襲的です。
治療と予防
足指の筋肉はアーチを支えるのに重要です。これを鍛えるためには裸足での生活を心掛け、足指を使うようにします。
予防には適正体重を保つことが大切です。アキレス腱が硬くなっているので、ストッレッチ体操を行います。アーチの低下が明らかな場合は、アーチサポート付きの足底板が処方されます。アーチを上げることにより、疼痛は緩和されます。
重症例では、手術が必要になることもあります。
関連する症状・病気
幼児期扁平足
外反母趾
幼児期扁平足
症状
歩き始めの時期に、足の裏が平べったいことに家族が気づき、心配になって受診されます。
立って体重をかけたときには土踏まずはなくなっていますが、体重をかけない状態では土踏まずができています。足の痛みを伴うことはありません。転びやすいと感じることはありますが、歩き始めの時期は転びやすいもので、扁平足が原因ではありません。
原因と病態
足にはアーチ構造があり、効率よく体重をささえるようになっています。幼児期扁平足では関節のまわりの靭帯がゆるみ、かかとが外を向いてアーチがつぶれるようになります。先天的な病気が原因のこともありますので、変形の程度が強い場合には、整形外科の医師にご相談ください
診断
立ったときにかかとが外を向いているかどうか、足のアーチが低下するかどうかを検査します。幼児期の子どもでは足の裏の脂肪が厚く、扁平足でなくても土踏まずが分かりにくいことがあるので、注意が必要です。
重症度は体重をかけたときの足部X線(レントゲン)像で診断します。
治療と予防
ほとんどの場合、成長に伴って自然にアーチが形成されるので、裸足の生活を心掛け、足の指を使うことで足の裏の筋肉を鍛えましょう。つま先立ちや足の外側縁で歩く練習、鼻緒のある履物も効果があります。少し成長すれば、足指じゃんけんをして遊ぶようにします。
アーチの低下が著しい場合には、アーチサポート付きの足底挿板が処方されることもあります。
関連する症状・病気
成人期扁平足
内反足
症状
先天性内反足は、うまれたときから足の変形がみられる疾患です。
放っておくと普通に歩行することが困難になり、変形が高度な場合には足の甲で歩くようになります。
原因と病態
先天性内反足の原因はわかっていません。およそ1000人に1人の発生率で、男児に多く、約半数は両足で、片足の場合は2:1で右側に多いという調査結果があります。
全身的に何か疾患があり、その1症状として内反足がみられる場合もあります。
診断
見た目の変形から、内反足の診断は比較的容易です。しかし、正常な足の位置に簡単に矯正でき、足関節の動きも十分良好である場合には、胎内での不良肢位が原因のもので、真の内反足ではありません。
矯正がむずかしい場合や関節の動きが十分でなく堅い場合には、先天性内反足と診断します。
治療と予防
予防法はなく、診断がついたら、まず矯正ギプスによる治療を行います。週に1回くらいの間隔でギプスを巻きかえ、2~3ヶ月間続けます。
ギプスだけで十分に矯正しない重症の場合は、小さな皮膚切開でアキレス腱を切る手術(皮下切腱術)を途中で行うこともあります。ある程度矯正したら装具によって矯正位を維持します。
どうしても十分な矯正が得られない場合には、1歳前後で本格的な手術(距骨下全周解離術など)を行うこともあります。
矯正が得られた後も、成長が終了するまで、原則的に何らかの装具は必要となります。幼児期、学童期以降に、変形の再発が見られる場合には、変形の程度に応じて、追加の手術を行います。
治療の第一目標は、足の裏を地面につけて歩行できる(足底接地)状態にすることです。
モートン病
症状
個人差はありますが、第3-4足趾間(第3趾と4趾の向かい合う側)のしびれ、疼痛、灼熱痛などの多彩な神経症状が出現します。前足部足底の小さな有痛性の腫瘤を主訴に来院することもあります。障害部位は、第2-3、4-5足趾間のこともあります。
また、痛みは強いことも少なくなく、時には、下腿まで及ぶことがあります。
原因と病態
原因
中腰の作業やハイヒールの常用など、つま先立ちをする格好が長時間続くと起こりやすくなります。槌趾変形(マレット指)がある場合にも同様な姿勢で生じやすくなります。
病態
深横中足靱帯
槌趾変形がある場合や中腰の作業、ハイヒールの常用などで趾の付け根の関節(MP関節:中足趾節関節)でつま先立ちをすることによって、足趾に行く神経が中足骨間を連結する靱帯(深横中足靱帯)のすぐ足底部を通過するため、この靱帯と地面の間で圧迫されて生じる神経障害です。
圧迫部の近位には仮性神経腫といわれる有痛性の神経腫が形成されます。中年以降の女性に多く発症します。
診断
障害神経の足趾間に感覚障害があり、中足骨頭間足底に腫瘤と同部のティネルサイン(神経傷害部をたたくとその支配領域に疼痛が放散する)があれば診断は確定できます。また、足趾を背屈するか、つま先立ちさせる痛みが強くなります。
確定診断には、X線(レントゲン)検査、筋電図検査、MRI検査、超音波検査などを必要に応じて行います。
治療
まず、足底挿板などを用いた保存的治療をします。
3ヵ月ほど様子を見て症状が回復しないものでは手術が必要になることもあります。
保存的療法
局所の安静(作業肢位、ハイヒールの禁止)、薬剤内服、足底挿板、運動療法、ブロック注射など。
手術療法
神経剥離、神経腫摘出、深横中足靱帯の切離等の手術が行われます。
詳しくは整形外科医にご相談ください。
関連する症状・病気
成人期扁平足
しびれ
腓骨神経麻痺
症状
下腿の外側から足背ならびに第5趾を除いた足趾背側にかけて感覚が障害され、しびれたり触った感じが鈍くなります。足首(足関節)と足指(趾)が背屈で出来なくなり、下垂足(drop foot)になります。
原因と病態
原因
最も多いのは、腓骨頭部(膝外側)の外部からの圧迫により生じるものです。下肢の牽引などで仰向けに寝た姿勢が続いたり、ギプス固定をしているときに、腓骨頭部が後ろから圧迫されると起こります。
ガングリオンなどの腫瘤、腫瘍、開放創や挫傷(ケガ)、腓骨頭骨折やその他の膝の外傷などによっても生じます。
病態
膝関節の後方で坐骨神経から腓骨神経が分岐し、腓骨神経が膝外側にある腓骨頭の後ろを巻きつくように走行します。その部は、神経の移動性が乏しく、骨と皮膚・皮下組織の間に神経が存在するため、外部からの圧迫により容易に麻痺が生じます。
診断
下垂足を呈し、上記の感覚障害があり、ティネルサイン(神経傷害部をたたくとその支配領域に疼痛が放散する)があれば傷害部位が確定できます。腰部椎間板ヘルニアや坐骨神経障害との鑑別診断が必要なこともあります。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行います。
治療
骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは早期に手術が必要です。原因が明らかでないものや回復の可能性のあるものは保存的治療をします。3ヵ月ほど様子を見て回復しないものや麻痺が進行するものでは手術が必要になります。
保存的療法
圧迫の回避・除去、局所の安静、薬剤内服、運動療法など。
手術療法
骨折、脱臼などの外傷で手術が必要なものや腫瘤のあるものは、手術が行われます。神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは腱移行手術(他の筋肉で動かすようにする手術)が行われます。詳しくは整形外科医にご相談ください。
関連する症状・病気
腰椎椎間板ヘルニア
痛風
症状
暴飲暴食した翌朝、急に足の親ゆびのつけ根が赤く腫れて痛くなることがあります。風が吹いても痛いということで、「痛風」と呼ばれています。足の親ゆびのつけ根以外に、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも激痛発作が起こることがあります。耳介に痛風結節や尿路結石が出来ることもあります。
生活習慣病(肥満や高血圧など)を合併することも少なくありません。痛風発作を何度か経験している人は、発作の前兆(違和感)を感じることがあります。
原因と病態
血液中の尿酸値が上昇(高尿酸血症)し飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じます。この結晶を白血球が処理する際、痛風発作(急性関節炎)が発症します。高尿酸血症状態が続くと尿酸結石が腎臓に生じ、腎機能が悪化して腎不全となります。
高尿酸血症の原因は様々です。腎臓から尿酸を排出する機能が低下したり、暴飲・暴食、肥満、激しい運動などが原因になると考えられています。降圧利尿剤などの薬物も原因になることがあります。
診断
確実な痛風の診断は、発作中の関節の中に尿酸の結晶があることを証明することです。通常は、血中尿酸値が高く痛風特有の臨床症状があれば、診断は可能です。
予防と治療
尿酸は絶えず身体の中で作られています。菜食を主とした食生活に切り替え、尿酸が体内で出来ないようにするか、内服薬で血中尿酸値をコントロールしなければなりません。そのためには、定期的な血液検査(尿酸値と腎機能検査等)が必要です。
発作時の治療には、消炎鎮痛薬を用います。局所麻酔剤入ステロイド関節内注入も効果的です。前兆症状や発作の鎮静化にはコルヒチンも有効です。痛風発作が治まってから、尿酸値をコントロールする薬を長期間服用します。
痛風の発作が起こらないからといって、薬を勝手にやめてはいけません。そのために再発作を起こす方が非常に多い病気です。
関連する症状・病気
関節リウマチ
足の慢性障害
症状
全体重のかかる足には、スポーツや歩行などで、いろいろな部位に痛みが生じます。
陸上競技やサッカー、バスケットボールなどのランニングやジャンプ動作の多いスポーツにおいて、慢性障害が多く発生します。
足の慢性障害には、種子骨障害、外脛骨障害、足底腱膜炎、踵骨々端症、踵骨滑液包炎などがあり、それぞれ特定の部位の痛みを訴えます。
原因と病態
足は、足根骨と中足骨が靭帯で結ばれ、縦横のアーチを形成し、筋肉や腱がこれらを補強しています。 スポーツにより、衝撃が続くと、足の骨や軟骨、靭帯や腱に障害をきたし疼痛が発生します。
足の使い過ぎ以外に、足の柔軟性低下や筋力不足、扁平足などの障害の発生しやすい足の形、不適切な靴、悪い路面での練習などが発症の背景になっています。
障害と診断
診察は圧痛点や痛みの局在、荷重位での足の変形などを調べます。
荷重位のX線(レントゲン)撮影をすると扁平足障害などの診断が可能です。
予防と治療
治療
スポーツでいったん障害が発症したら、練習量を減らすか、一定期間の休養が必要です。
これに加えてアイスマッサージや温浴・低周波、塗布薬などの鎮痛消炎剤の使用、ステロイド剤の局所注射、足底装具の使用などの理学療法、などの対処法があります。
予防
発生要因をよく考え、その要因を取り除くことが大切です。
①足部および下腿筋のストレッチング
②スポーツ後のアイシングの励行
③足にフィットしたシューズの選択
④足底装具の使用
などで予防しましょう。
関連する症状・病気
スポーツ外傷の応急処置
スポーツによる膝の慢性障害
扁平足